目指せ、労働災害ゼロ!~建設業でのさらなるAI活用のすゝめ~

多くの企業において、労働災害の減少や予防を目的とした安全対策や訓練、必要な装備を身に着けるなどさまざまな防止策は実施されていたはずですが、人間の意識や行動には限界があるのもまた事実であり、これから労働災害の減少を考える場合には、新たな手法やツールを検討するタイミングなのかもしれません。
その新しい手法として効果的だと考えられるのがAIです。
とくに建設業にフォーカスして、労働災害を減らすAI活用を考えてみたいと思います。
深刻化する建設業の労働災害、その現実
厚生労働省の「職場あんぜんサイト」における労働災害統計(令和6年)を見ると、労働災害統計確定値は、全産業合計で748名でした。
令和5年(755名)と比較すると、9名(1.2%)の減少ではありますが、それでも多くの死亡災害が発生しています。

業種別で見ていくと、建設業(232)、第三次産業(194)、製造業(142)、陸上貨物運送事業(108)と並びます。
全体とすれば、多少昨年からの減少は見られるものの、その減少率は1.2%にとどまっており、大きな差異はない印象です。
そこで、さらにどのような死亡災害だったのかの統計が以下となります。

全体で見てみると、死亡災害として多いのは、墜落・転落(188)、交通事故(道路)(123)、はさまれ・巻き込まれ(110)、激突され(61)の順です。上位3災害だけで計421なので、全体の56.4%にも上ります。
建設業における令和6年の死亡災害は232人ですが、政府が掲げる「第14次労働災害防止計画」では、令和9年までに建設業の死亡災害を15%以上削減する目標が設定されていますが、現状は目標達成に向けて逆行している状況です。
また、同じく厚生労働省の「職場あんぜんサイト」における労働災害統計(令和6年)からわかるのは、死傷災害は建設業で13,849人にも上るということです。(死亡災害及び休業4日以上の死傷災害)

AI導入がもたらす3つの革新的メリット
1. リアルタイム危険予知で事故を未然に防ぐ
AIカメラとセンサー技術の組み合わせは、現場の安全管理を根本から変革します。
作業員の動線、重機の位置、足場の状態など、膨大な情報をリアルタイムで解析し、危険な状況を瞬時に検知してアラートを発信。人間の目では見逃しがちな小さな異変も、AIは見逃しません。
活用例としては、画像認識AIによる人物検知を行う危険予知システムです。
立入禁止区域への侵入や安全帯の未装着をリアルタイムで検知し、即座に警告を発することで、潜在的な事故リスクを劇的に低減させることが可能です。
部外者の侵入を防ぐ目的にも利用できますし、重機オペレーターの死角となるエリアへの侵入を防ぎ重機接触事故を予防にも役立ちます。
現場監督が目視で確認できる範囲には限界がありますが、AIなら24時間365日、現場全体を監視し続けることが可能です。
また、ヒヤリハット自動記録・分析もAIでより効率化できます。蓄積されたデータから、危険が発生しやすい時間帯、場所、作業パターンをAIが分析。予防的な安全対策の立案が可能になり、朝礼での注意喚起や安全教育に活用できます。
2. 熟練者の「暗黙知」を共有ナレッジ化
建設現場における品質検査は、プロジェクトの成否を左右する重要業務です。しかし、熟練技術者不足、検査のばらつき、膨大な工数という課題が散在しています。
AIを活用することで、構造物検査の自動化や仕上げ検査、さらにはドローン連携による高所・危険箇所検査などを効率的に且つ高精度で行うことが可能になります。
構造物検査の自動化AIでは、コンクリートのひび割れ、剥離、鉄筋の配置ミス、溶接部の不良など、構造物の品質をAIが自動検査できるので、判定のブレを無くすだけでなく、検査結果は位置情報とともにデジタルエビデンスとしてトレーサビリティも同時に確保します。
また、ドローンで撮影した映像をAIが解析し、高所や危険箇所の検査を安全かつ効率的に実施できれば、労働災害の発生にもなりうる高所や危険個所での作業をそもそも人間が行うことを無くせます。足場設置のコストと時間も削減しながら、より詳細な検査が可能になります。
3. 安全書類の業務効率化
建設現場の安全管理者が直面する大きな課題の一つが、日々の安全書類作成です。KY活動記録、作業前点検表、安全パトロール報告書、定期的な安全統計報告書ーーこれらの書類作成に多くの時間が費やされています。
VLM(Vision Language Model)技術を活用した安全書類の自動化により、時間の削減はもちろん、より具体的かつ照合・分析なども可能となります。
例えば、撮影した現場写真から、AIが画像内の状況を分析します。足場の設置状況、保護具の着用状況、作業環境の整理整頓状態など、安全上の確認ポイントを画像認識技術で検出し、記録として残すことができます。
そして、検出された情報に基づき、KY活動記録や安全チェックリストの作成を支援します。
さらに、労働安全衛生法や建設業法で求められる記録項目をシステムに登録しておくことで、必要な記録の作成漏れを防ぐことができます。
同時に考慮すべきAI活用における留意点
1. 初期投資とランニングコストの現実
AIの導入には、目的に適したAIモデル開発はもちろん、それを稼働させるためのAIハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク環境の整備など、相当の初期投資が必要です。カメラやセンサーの設置、さらには保守・運用費用も継続的に発生します。
2. 現場作業員の心理的抵抗と教育コスト
AIで安全管理を実施することは、人により「AIに監視されている」という感覚を生じる可能性もあり、現場作業員に心理的な圧力を与えかねません。特にベテラン作業員の中には、長年培ってきた経験と勘を否定されたように感じる人もいるでしょう。
新しいシステムの操作トレーニングはもちろん、安全管理についての新たな認識のインプットも必要となる可能性があります。
3. AIの判断精度と責任の所在
AIは万能ではありません。学習データの質や量により判断精度は変動し、想定外の状況では誤検知や見逃しが発生する可能性もあります。特に建設現場は天候、季節、地域特性など変動要素が多く、完璧な予測は困難です。
AIが危険を検知できなかった場合、または誤った警告を出した場合、その責任は誰が負うのか。法的・倫理的な問題も含め、明確なガイドラインの整備が求められます。AIはあくまで「支援ツール」であり、最終判断と責任は人間が担う体制を確立することが重要です。
労働災害ゼロへの道筋 ― AI活用の未来像
建設業界が直面する課題は複雑で、AI導入だけで全てが解決するわけではありません。しかし、リアルタイム危険予知、ベテランの知見共有、業務効率化という3つの力を組み合わせることで、労働災害削減への道は確実に開けるのではないでしょうか。
重要なのは、AIを「人間の代替」ではなく「最強のパートナー」として位置づけること。熟練作業員の経験と判断力に、AIのデータ分析能力と24時間監視能力を掛け合わせる。この人間とAIの協調こそが、建設現場の安全性を次のレベルへと引き上げるものと考えます。
初期投資、教育コスト、心理的抵抗といった留意点は確かに存在します。
しかし、失われる命の重さ、労働災害がもたらす経済的・社会的損失、そして若者が安心して働ける環境づくりという視点で考えれば、AI導入は「いずれの検討事項」ではなく「今すぐ取り掛かるべき現実的手段」であると思われます。
まずは気軽なご相談から。貴社の現場の課題を聞かせてください。
ぜひお気軽にお問い合わせください。
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