公共インフラにおける「予防保全」はどこまで実現できるのか

公共インフラの維持管理において、「予防保全」という考え方は以前から重要視されてきました。しかし実際の現場では、異常や故障が顕在化してから対応する事後保全が中心となっているケースも少なくありません。その背景には、人手不足、点検頻度の制約、異常兆候を定量的に捉える難しさといった課題があります。

近年、画像認識AIや動画認識AIといった技術の進展により、これまで人の経験や勘に頼っていた「劣化の兆し」をデータとして捉え、早期に検知することが可能になりつつあります。本記事では、公共インフラにおける予防保全の現実と、AIによる劣化兆候検知が果たす役割について整理します。

公共インフラにおける「予防保全」

公共インフラ保全の現状と限界

道路、橋梁、発電設備、水インフラ、通信設備などの公共インフラは、いずれも長期間にわたり使用されることを前提に設計されています。一方で、点検・保全業務は以下のような制約を受けています。

  • 点検は年1回、数年に1回と頻度が限られる
  • 人による目視点検は主観的になりやすい
  • 微細な劣化は「経過観察」とされやすい
  • 点検記録が十分に活用されていない

この結果、「問題が起きてから初めて対処する」という事後対応型の保全から抜け出しにくい構造が生まれています。

予防保全に必要なのは「兆候」を捉える視点

予防保全を実現するためには、「壊れたかどうか」を判断するのではなく、「壊れそうかどうか」を捉える必要があります。しかし、この劣化兆候は必ずしも明確な異常として現れるわけではありません。

例えば、

  • ひび割れの幅がわずかに拡大している
  • 表面の色味や質感が徐々に変化している
  • 振動や動き方に微妙な違和感がある

といった変化は、熟練者であれば気づくこともありますが、定量的な基準として扱うのは容易ではありません。ここに、AI技術が活用される余地があります。

画像認識AIによる劣化兆候検知

画像認識AIは、設備や構造物の外観をデータとして捉え、過去の状態と比較することで変化を検知します。単発の「異常検知」だけでなく、時系列での微細な変化の蓄積と分析が可能な点が特徴です。

画像認識AIで可能になること

  • ひび割れや剥離の拡大傾向の把握
  • 表面劣化や腐食の進行度合いの可視化
  • 点検結果の定量化・標準化

これにより、「今すぐ対応すべきか」「次回点検まで様子を見るか」といった判断を、経験だけでなくデータに基づいて行えるようになります。

動画認識AIが捉える「動きの変化」

劣化兆候は静止状態だけでなく、「動き」にも現れます。動画認識AIは、設備や構造物の挙動を継続的に分析し、通常とは異なる動きを検知します。

動画認識AIの活用例

  • 可動部の動作速度やリズムの変化
  • 振動の増加や不規則な動き
  • 風や水流に対する挙動の違い

これらは、故障や不具合の初期段階で現れることが多く、動画データを用いた監視は予防保全と非常に相性が良いアプローチです。

予防保全におけるAI活用の現実的な位置付け

重要なのは、AIがすべての異常を自動で判断するわけではないという点です。AIはあくまで「兆候を見つける役割」を担い、最終的な判断や対応は人が行います。

この役割分担により、

  • 人は判断・対応に集中できる
  • 点検対象の優先順位付けが容易になる
  • 見逃しリスクを低減できる

といった効果が生まれます。予防保全におけるAIは、人の判断を前倒しで支援する存在と捉えるのが現実的です。

ただし、AIを活用した予防保全を実現するためには、以下の点に留意する必要があります。

  • 同一条件での継続的なデータ取得
  • 正常状態データの十分な蓄積
  • 劣化兆候をどう業務判断に反映するかの設計
  • 過検知・見逃しへの運用ルール整備

特に、AIの検知結果を「どう使うか」を決めずに導入すると、現場の混乱を招きやすくなります。

予防保全がもたらす長期的な価値

AIによる劣化兆候検知を活用した予防保全は、短期的なコスト削減だけでなく、長期的な価値を生み出します。

  • 設備寿命の延伸
  • 突発故障の削減
  • 保全予算の平準化
  • 安全性・信頼性の向上

これらは、公共インフラを持続的に運用していく上で欠かせない要素です。

これまで予防保全は理想論として語られることも多く、現場では実現が難しい側面がありました。しかし、画像認識AIや動画認識AIを活用することで、劣化兆候をデータとして捉え、現実的な運用に落とし込むことが可能になりつつあります。

公共インフラDXにおいて重要なのは、完璧な自動化を目指すことではなく、人とAIが役割分担しながら、より早く、より安全に判断できる体制を構築することです。予防保全は、AIによってようやく「実行可能な戦略」となり始めています。

どこから手を付ければよいかなど、まずはお気軽にご相談ください。

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