人工知能学会全国大会(第39回)から見る日本のAI現在地

JSAI2025 人工知能学会全国大会とは
毎年開催される人工知能学会全国大会は、ほぼ年を追うごとに参加者ならびに論文が増加しています。
◆2025年度の開催
開催期間:2025年5月27日(火)~30日(金)
会場:大阪国際会議場+オンライン
今年も参加者数、論文集掲載数ともに過去最多を更新となりました。
◆過去のJSAI開催時参加者数、論文集掲載数のまとめ
大会数 | 開催年 | 参加者数(概算) | 論文集掲載数 | 備考 |
第39回 | 2025年 | 4,939名 | 1,174 | 現地4,032名、遠隔907名 過去最多を更新 |
第38回 | 2024年 | 3,792名 | 939 | 協賛企業数113社 |
第37回 | 2023年 | 3,527名 | 942 | 現地参加はコロナ前水準に近い |
第36回 | 2022年 | 3,029名 | 727 | ハイブリッド開催 |
第35回 | 2021年 | 2,320名 | 514 | オンライン開催 |
第34回 | 2020年 | 約3,000名 | 892 | オンライン開催(コロナの影響) |
第33回 | 2019年 | 2,905名 | 735 | コロナ前、現地参加のみ |
第32回 | 2018年 | 2,572名 | 753 | 数百人規模から増加傾向 |
第31回 | 2017年 | 約2,500名 | 709 | |
第30回 | 2016年 | 約1,600名 | 690 |
※※論文集掲載数は全国大会での発表数とは異なる場合があります
これほどの研究者、エンジニアの方々が参加し、発表する場では、どのような傾向となっているのかまとめたいと思います。
JSAI2025での技術動向とは
全体として、近年の生成AIの爆発的な進展が、大会のセッションや発表内容に色濃く反映されていることが伺えます。
- 生成AIの多角的な研究と応用
- 大規模言語モデル(LLM)の深化と応用:
- LLMのアラインメント(意図との整合性)や解釈可能性に関する研究が多数見られます。ブラックボックス化しがちなLLMの振る舞いを理解し、信頼性を高めるためのアプローチが注目されています。
- 生成AIを用いた顧客プロファイル生成や、求人推薦システムへの応用事例など、ビジネス課題解決への実践的な利用が報告されています。
- 特定のドメイン(例:会計分野)に特化したRAG(Retrieval-Augmented Generation)ベースの質問応答システムなど、より実用的な生成AIの構築が進んでいます。
- 画像生成AIの進展:
- 画像生成だけでなく、画像編集、セグメンテーション(例:SAMを使ったアスベスト領域抽出)など、様々な画像認識タスクへの応用が試みられています。
- 有向グラフ画像をテキストに変換する研究など、異なるモダリティ間での生成・変換技術も発表されています。
- 大規模言語モデル(LLM)の深化と応用:
- 人とAIエージェントの共生・協働
- 「人とAIエージェントの共生・協働 ~生成AIがもたらす社会・産業の変革に向けて~」という企画セッションが開催されており、AIが単なる道具ではなく、自律的に動く「エージェント」として人間や社会とどのように共存し、協働していくか、その際の課題やリスクについて活発な議論がなされました。
- AIエージェント同士の会話から生まれる現象の観察など、マルチエージェントシステムの創発的な振る舞いに関する研究も行われています。
- AIの安全性、公平性、倫理
- AIの活用が広がる中で、ジェンダーバイアスやデマ・フェイク情報対策、ファクトチェックなど、AIが社会にもたらす負の側面への懸念が高まっています。
- AIの公平性やバイアス是正、AIのリスクと安全性に関する研究、さらにはAIの品質マネジメントについてのチュートリアル講演も行われており、技術の社会実装に伴う倫理的・社会的な側面への関心が高まっています。
- 基盤モデル(Foundation Models)とその数理
- 「深層基盤モデルの数理」に関するチュートリアル講演が開催されるなど、大規模な事前学習モデルの理論的背景や、その応用に関する基礎研究も引き続き重要なテーマとなっています。
- 少ないデータで高精度な予測を行うための効率的な学習方法や、モデルの解釈性向上が引き続き注目されています。
- フィジカルAIシステムと身体性知能
- フィジカルAIシステムや身体性知能に関する最新研究の紹介も行われました。実世界タスクの遂行能力や限界、AIとロボティクスの連携など、実世界でのAIの応用に関する議論が深められています。
JSAI2025での傾向まとめ
JSAI2025は、生成AIの爆発的な普及とそれに伴う新たな研究課題(倫理、安全性、アラインメントなど)、そしてAIが自律的なエージェントとして人間と共生・協働する未来像に焦点を当てた議論が活発に行われた大会と言えます。同時に、画像認識、予測モデルといった基盤技術の深化や、実世界への応用、そして効率的なAIの実現に向けた研究も継続して進められています。
日本のAI分野における現在地としては、発展と進化の只中であり、半導体メーカー・AI関連のサービス提供元企業・エンジニア・研究者などのAI分野に関わる総数が増加傾向から、今後もさらなる進化が見込めると言えると思います。
日本独自、日本文化を生かしたAIの登場というのもありえるのかもしれません。
当社代表が博士を取得した立教大学瀧研究室の論文発表も
JASI2025においては、立教大学瀧雅人准教授の共同研究の論文発表もありました。さらに注目すべきは、この研究成果が世界最高峰の国際会議ICCV2025(International Conference on Computer Vision 2025)にも採択されたことです(出典:立教大学のプレスリリース)。
地理情報を考慮した3D都市ビジュアルプログラミング
安木 駿介1、宮西 大樹2,3、井上 中順4、栗田 修平5、坂本 滉也6,3、東 大地7、Lee Jungdae4、瀧 雅人1、松尾 豊2 (1. 立教大学、2. 東京大学、3. 国際電気通信基礎技術研究所、4. 東京科学大学、5. 国立情報学研究所、6. 京都大学、7. ソニーセミコンダクタソリューションズ)
この研究では、「GeoEval3D」という新しい評価用データセットも作られ、様々な地理的な質問に対してGeoProg3Dが他の既存システムよりも優れた性能を発揮することが示されました。
この技術は、都市計画、災害時の対応(どこに支援が必要かなど)、環境モニタリング(森林の状況や汚染源の特定など)といった、私たちの生活に関わる多くの分野で役立つことが期待されています。言葉一つで都市の情報を自在に操れるようになることで、より効率的でスマートな社会が実現するかもしれません。
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